「彼女は、闘った」というシンプルで力強い帯のコピーが刺さって、立ち寄った本屋でなにげなく購入、すぐひきこまれて4時間で一気に読了しちゃいました。

こんなに強いヒロインの物語は他にないんじゃないでしょうか。(そして実話!)

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「ある奴隷少女に起こった出来事」


好色な医師フリントの奴隷となった美少女、リンダ。卑劣な虐待に苦しむ彼女は決意した。自由を掴むため、他の白人男性の子を身篭ることを―。奴隷制の真実を知的な文章で綴った本書は、小説と誤認され一度は忘れ去られる。しかし126年後、実話と証明されるやいなや米国でベストセラーに。人間の残虐性に不屈の精神で抗い続け、現代を遙かに凌ぐ“格差”の闇を打ち破った究極の魂の物語。

あらすじも衝撃的ですが、特に第2章をひらくと登場する、逃亡生活を送る主人公リンダが7年間過ごした隠れ家の図は「え、どういうこと?」と思わず目を疑います。ほとんど動くこともできないその空間で彼女が外の光景を見聞きしながら苦悶の日々を過ごす描写は、実話だとは信じがたいほどの過酷さ。「死を選んだほうがまし」というくらいの悲しいエピソードたちはなんだか自分の想像力の限界をいっていて、おとぎ話を読んでいるような感覚になるほど、人間として主人公が味わった苦難は残酷すぎる。


でもこれはたった130年そこそこ前の出来事で、むしろ奴隷制や人身売買が是正されはじめたのは歴史上本当に最近のこと、且つ、現代でも形を変えて世界中で起きていることだと考えると、人間はなんて弱い生き物なんだろう、自分は偶然にもなんて恵まれた境遇に生まれたんだろうと、ありきたりに思わざるを得ませんでした。


この本のすごいところ、ベストセラーたる所以は、そんな凄惨な運命の中の主人公リンダが一貫してすっごく力強くて冷静で、「生き抜く!」「闘う!」姿勢を崩さずに真っ向から、そして至極真っ当な主張を持って立ち向かっていくのが痛快さすら感じさせるからだと思います。


そして何より読んだあと、普遍的に大切なことはなにかについて深いところで気付かされる感覚がありました。


どんな時代、場所、状況にあっても、自由を求める精神、家族との絆は希望であり、尊いということ。それから、与えられた運命に「どう向き合うか」の態度を決めるのは自分自身なのだということ。

外からどう見えたとしても、自分の人生にどう立ち向かったかは、自分が1番よく知っている。結局、どんな苦境においても(もちろん順境な時も)勇気をもって正しいファイティングポーズを取りつづけることこそが、道を切り開く唯一の方法なんだと、生きていくための強いお守りを1つもらったような気持ちに。

暗くて辛い物語のはずなのに、深いところで元気になる作品でした。

ある奴隷少女に起こった出来事 (新潮文庫)
ハリエット・アン ジェイコブズ
新潮社
2017-06-28



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